影響力の武器
ロバート・チャルディーニの「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」という書籍がお勧めです。物を買わせたり、何かを承諾させたりするとき、人に影響を与える理屈が以下のような6つの原理として分析されています。
1.返報性
人は、他者から何かを与えられたら自分も同様に与えるように努める。
2.一貫性
人は、自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたいという欲求がある。
3.社会的証明
人は、他の人々が何を信じているか、どう行動しているかを見て、自分が何を信じるべきか、どう振る舞うべきかを決める。
4.好意
人は、自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある。
5.権威
人は、権威に服従しやすい。
6.希少性
人は、機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす。
非常に実践的な内容で、これから社会生活を営む上で必要な事例がわかりやすく紹介されています。ただし悪用厳禁です。
私が学生のころ、東京の渋谷で体験した話をしたいと思います。今振り返ってみると、まさに影響力の武器が駆使されていました。
私が街を歩いていると、若くて綺麗な女性が絵はがきを無料で配っています。何気なく絵はがきを受け取ると、「今、絵画の展示会をやっていますので、是非ご覧になってください」と声をかけられます。
私はこのとき、なぜかその誘いを断ることができませんでした。これは「1.返報性 人は、他者から何かを与えられたら自分も同様に与えるように努める。」の原理を利用したものです。絵はがきを無料でもらったのだから、お返しに展示会に参加してあげるくらい良いかな。そう思わせるテクニックです。
女性に連れられて展示場の中に入ると、高級感溢れる絵画が壁に掛けられています。
私は、絵に興味があるかどうかを尋ねられました。このような状況で、「私は絵画に興味がありません」とは言いずらいし、
なにしろ私の手には先ほど渡された “絵はがき“が握られているのです。
これは、「2.一貫性 人は、自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたいという欲求がある。」
から、私は絵に興味がないと言えない状況に追い込まれたのです。
絵はがきを受け取り、今まさに絵の展示会にいる自分が、絵画に興味がないという矛盾した言動は取りたくないという欲求が働いたのです。
その女性は、私と同じような学生がここで絵を購入して、今いかに幸せになり満足した生活を送っているのか、
そして、部屋に絵が飾られていることはなんと素晴らしいことかを、私に似た人を例に説明しました。
これは、「3.社会的証明 人は、他の人々が何を信じているか、
どう行動しているかを見て、自分が何を信じるべきか、どう振る舞うべきかを決める。」の利用です。
人は迷ったときには、できるだけ周りの人と同じような行動を取ろうとします。
我々が昔原始人だったころ、そのように集団で行動するほうが危険を回避できたため、
その昔の名残が脳に刻まれていると考えられています。
その女性は、清潔感のある白いワイシャツを着ており、話し方や態度、相槌の打ち方など、とても好感の持てる方でした。
昔はモデルでもしていたのかな。そう思わせるほどの美貌とスタイルの持ち主です。
これは、「4.好意 人は、自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある。」ですね。
展示している絵画から、自分が気に入った絵を2 つ選ぶように言われました。
まだ販売の話は一切出てきません。
次に、「あなたが良いと思ったこの2 つの絵のうち、1 つを部屋に飾るとしたら、どっちがいい?」と質問されました。
二者択一の質問ですので、この質問に対して「両方とも僕の部屋には不要です」と言える世の男性は何パーセントいるでしょうか。
私が片方を指差すと、「私もそちらが素敵だと思った」と共感し、
こちらの絵は、○○先生という絵画の専門家のお墨付きであるとも言われました。
これは、「5.権威 人は、権威に服従しやすい。」です。
最後に、個室に連れて行かれ、絵の販売の話になりました。
この絵は、もう残り1つしかなく、今決断しなければ一生手に入らないかもしれない、
今だけがチャンスだと言われました。
そう、「6.希少性 人は、機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす。」です。
そのときの販売価格は80万円でしたが、希少性によってその絵には80万円以上の価値があると思い込んでしまうのです。
そして、ついに私は、、、
(終)
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